こんにちは!
大学で狩猟とジビエのサークルである「み じ か」の代表を務める、あかりんご(@akaringo252588)です!
皆さん、鹿が引き起こすのは農業の獣害だけではないことをご存知ですか?
実は鹿が住んでいる森でも深刻な問題が起こっているのです。
そこで今回は鹿が増えすぎた森林で何が起こっているのかについて紹介したいと思います。
その被害に対してどのような対策がされているかも紹介しますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
- 樹皮剥ぎ:
樹皮とは、木の表面にある組織のことで、樹皮剥ぎとは鹿がそれを剥がすことをいいます。 - 幼樹:
移植するために育てられた若くて小さな木のこと。 - 成長点:
植物において成長の起点となる場所のこと。細胞分裂が活発に行われている。
鹿は増えすぎている
本題に入る前に、鹿の個体数について見ていきましょう。
おおよその鹿の個体数は、ここ30年ほどで約8倍に増加しています。
こちらは環境省が算出した鹿の推定個体数です。
2015年における鹿の個体数は289万頭と予測されました。
個体数がピークに達した2015年から、個体数は減少しています。
ですが数十年前に比べると、鹿は増えすぎている状態にあると言えます。
まずは数を減らすことが重要
増えすぎた鹿の個体数を管理するために、まずは数を減らす取り組みが行われています。
環境省が発表する方針は、今の頭数の半分に減らすというもの。
そのためには最大でも年間80万頭の捕獲が必要となり、猟師さんに報奨金が用意されるなどの対応がとられています。
増えた理由は様々言われていますが、直近の個体数管理は重要とされています!
森林での被害の実態
こうした鹿の増えすぎに伴い、森林における被害が出始めています。
令和元年における鹿や熊などによる森林被害面積は全国で約5千ヘクタール。
関西国際空港の総面積が約千ヘクタールなので、関西国際空港の5倍の面積の森林被害が起こっているということになります。
このうち、鹿による枝葉の食害や剥皮被害が全体の7割を占めています。
それでは鹿が増えすぎた森で何が起こっているのでしょうか?
今回紹介するのは、これら3つです。
- 樹皮剥ぎ
- 下層植生の食害
- 定植された若木の食害
それぞれについて説明していきます。
樹皮が剥がれ、枯れてしまう木も
樹皮剥ぎとはその名の通り樹皮が剥がれることです。
この原因には、2つ種類があります。
- 鹿が食べてしまう
- 鹿が角を擦り付ける
まずは①について説明します。
食べ物の少ない冬季に鹿は栄養不足になります。
地面に生えている植物を食べ尽くしてしまうと、次に食べるのは木の樹皮。
鹿は植物であればほとんど何でも食べられるのです。
狙いをつけられた木は鹿の口が届く高さまで綺麗に樹皮を剥がれ、食べられてしまいます。
また、②の角こすりとは、オスの鹿が角を木に擦り付けることを指します。
これはオスが角についている皮を取り角を研ぐために行われます。
鹿の角は春から成長し始め秋に完成します。
成長段階は皮に包まれていますが、秋に角が完成すると木に角を擦り付けてその皮を取るのです。
下層植生が全てなくなる
下層植生とは、地面に生えている比較的丈の短い植物たちです。
鹿の密度が高い地域では、鹿がこれらの下層植生を食べてしまいます。
これによって何が起こるのでしょう?
その一つに土壌の流出があります。
草は根を生やして体を地面に固定しますが、これは言い換えると土をしっかりその場に留めてくれるということ。
これがなくなってしまえば、山の表面から土が流出してしまうのです。
土は栄養と言い換えることもできます。
つまり、土が流れるということは栄養が流れ出ることにもなるのです。
また下層植生がなくなるということは、その場を住処としていた生き物が生活できないということにも繋がります。
生物多様性という観点からも、下層植生がなくなることは深刻な問題と言えます。
定植された若木の食害
幼樹木の枝葉は柔らかくて食べやすいため鹿が好むのです。
木の枝葉には成長点という位置があり、そこからどんどん枝を伸ばして成長します。
ですが鹿がこの成長点を食べてしまうと、定植した木が成長できません。
これは林業を営む人にとっては大きな被害になるのです。
例えばこちらは鹿の食害を受け、木の成長が見込めないヒノキの植林地です。
手前のヒノキの木は成長が見られず、茶色い地面が見えているのが分かります。
どのような防除がされているのか
それでは、これらの鹿被害に対してどのような対策がされているのでしょうか?
今回は捕獲による個体数調整以外で、3つの防除方法をご紹介します。
忌避剤(きひざい)の散布
これは幼樹木の枝葉の食害対策です。
忌避剤(きひざい)とは動物が嫌がる匂いや成分のことで、それらの動物が近寄らないように使用するものです。
この忌避剤を噴霧器で撒いたり、手で葉に擦り込んだりして動物に食べられることを防ぎます。
ネットの設置
これはネットで鹿の侵入を防ぐというものです。
物理的に侵入を防ぐものから、遮光ネットまで様々な種類があります。
遮光ネットとは、ネットの奥の視界が遮られる性質を持つネットのこと!
鹿は見通しの悪いところを嫌う性格があるため、効果ありと考えれられているよ!
ネットの設置で効果を上げているのは、埼玉県の「さいねっと」です。
従来ではネットを垂直に立てる方式が取られていましたが、このさいねっとの最大の特徴はたるみ。
支柱からアンカーまでを長くすることで2つの利点があります。
- 下を潜り抜けにくい
- 噛み切りにくい
またネットの網目は鹿の足が抜けるサイズで、ちょうど鹿の足が絡みやすくなっています。
テープ巻き
これは樹皮剥ぎ対策です。
鹿が食べられないように、木の幹の周りをテープでグルグル巻きにするのです。
これはテープを用いる場合もあれば、金網やトタンで巻きつけることもあります。
森林資源としての鹿
鹿の個体数を管理するというと、鹿だけに目がいきます。
ですが実は鹿だけではなく森林という大きな単位で鹿を見ることも重要なのです。
森にどんな植物が生えているのか、生えている木の種類や密度はどうか…など森に関わる全てが鹿と密接に関係しています。
鹿を狩猟対象、管理対象とだけ見るのではなく一つの森林資源として捉え、鹿問題に取り組むきっかけになればと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- 6千ヘクタールの森林被害面積のうち、鹿によるものは約7割。
- 鹿が起こす森林被害は樹皮剥ぎ、下層植生の食害、植林した幼樹木の食害が挙げられる。
- テープやネットなどで防除が行われている。