こんにちは!
大学でジビエ&狩猟サークル「み じ か」の代表を務める、あかりんご(@akaringo252588)です。
皆さん、鹿の利用率はどれくらいか知っていますか?
利用率とは、捕獲頭数に対してどれくらいの頭数が利用されたのか、という割合です。
実は鹿の利用率は、10%程度。
現在この利用率をもっと増やそうと言う取り組みがされています。
では、もし利用率が100%になったら時、どれくらいの市場規模になると思いますか?
今回の記事では、もし鹿が100%利用された時、どれくらいの肉が生産できるのかについて一般的な畜産肉と比較して考えてみました。
現時点での鹿の利用率は1割程度
農林水産省によると、平成28年度の鹿の利用率は9%でした。
イノシシはもっと低い5%で、鹿とイノシシを合わせた利用率は7%となっています。
ここで利用率とは捕獲頭数に対する利用頭数の割合です。
つまり加工施設に持ち込まれ処理された頭数が、全体の10%ということです。
しかも加工施設に運ばれた鹿は全て利用される訳ではありません。
皮や内臓は廃棄することも多いため、鹿1頭あたりの利用も進んでいるとは言えないのです。
また捕獲された他の個体は、土に埋めたり焼却し、処分されています。
できれば全て利用したいと思いませんか!?
獣害の発生により捕獲が急務に
それではなぜ、利活用の足場が未完成のまま捕獲頭数が増えていったのでしょう?
その理由の一つが、獣害です。
獣害とは、野生動物が里へ降りてきて農作物を食べてしまうことです。
時間をかけて育てた農作物が収穫の前日に荒らされてしまったということも少なくありません。
こうした被害が深刻である状態が続いたために、鹿を捕獲することが急務となったのです。
獣害についてもっと知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください!
捕獲された鹿が100%利用された場合を概算!
それでは、捕獲された鹿が全て利用されたとして、肉の量はどれくらいになるのでしょうか。
平成30年は、鹿の捕獲頭数が56万頭でした。
この半分がオス、半分がメスとしましょう。
体重については振れ幅が大きいですが、ここでは
- オスの体重を80kg
- メスの体重を45kg
を用いることにします。
(参考:一般社団法人 奈良の鹿愛護会HP)
すると、オスとメスを考慮した平均体重は以下のようになります。
1頭あたりの平均体重が計算できました。
では次に、鹿の捕獲頭数が56万頭だったことから捕獲量について計算します。
62.5 kg×56万頭 = 35000 t
次に歩留まりの計算です。
歩留まりとは、体全体から取れるお肉の量です。体は筋肉だけでなく骨や内臓からも構成されているため、筋肉が占める割合はわずか30%ほどです。
歩留まりは「獣肉加工処理施設の現況調査アンケート」を参考に、30%として計算します。
それでは計算してみましょう。
35000t ×0.3 = 10,500t
もし平成30年に鹿の利用頭数が100%なら、取れるお肉は10,500tという推定結果が出ました。
鹿を100%利用すると馬肉の流通量になる
ここで、先ほど算出した鹿肉量を牛肉や豚肉などの推定出回り量と比べてみることにします。
牛肉 | 豚肉 | 鶏肉 | |
---|---|---|---|
推定出回り量(t) | 936,945 | 1,811,550 | 2,215,991 |
このように牛肉は約93万トン、豚肉は181万トン、鶏肉は221万トンもの量が出回っているとされています。
鹿肉の利用率が100%になり鹿肉生産量が10,500tになったとしても、牛肉や豚肉の流通量には到底及ばないことが明らかになりました。
畜産肉、やっぱりすげえ!!!!!!!!
鹿肉が狙うべきポジションは馬肉!?
やはり大規模に展開する家畜産業には敵わないのでしょうか?
私はそう思いません。
例えば、平成30年の馬肉の国内生産は3,850tです。
輸入も合わせると12,724tになり、ほとんど算出した鹿肉の肉量と同量です。
馬肉は流通量が少ないものの、馬刺しなどは居酒屋で人気。
つまり、馬肉と同量の供給が見込める鹿肉も馬肉同様に、牛豚鳥とは別の特別な存在になり得ると思います。
純国産の鹿肉には価値がある
ジビエは日本の資源のみで育った、純国産のお肉です。
飼料を輸入しなくてもお肉が手に入るジビエという食肉生産システムは、日本らしいお肉の作り方なのではないかと思います。
私は鹿肉のこういった部分に魅力を感じています。
ですが未だ日本では鹿肉を食べることは一般的でないのが現状です。
だからこそ、こうしたジビエメディアを通じた情報発信が重要なのです。
この記事を読んで、少しでも鹿肉について興味を持っていただけたら嬉しいです。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
- 捕獲頭数は上がったが、利活用のシステムが確立されていないため鹿の利用率は9%
- 鹿の利用率を100%として生産できる肉量は10,500トンで、馬肉の流通量と同じレベル。