ジビエをもっと、あなたらしく。
ジビエを食べる人、つくる人、届ける人。 すべての人に、エールを。
ジビエの世界

【ジビエビジネス】家畜牛から学ぶ鹿資源活用法まとめ

こんにちは!
鹿の活用に興味を持ち、大学でサークルまで立ち上げてしまったあかりんご(@akaringo252588)です!

サークルのテーマは「鹿をどのように活用できるか?」です。

そして私は鹿を利用していくヒントが畜産にあるのではないかと考えています。

そこで今回は、牛の肉から骨までの活用法を紹介します!

これを踏まえて鹿の利用についても考えていくので、最後まで読んで頂けると嬉しいです。

ニホンジカの低い利用率

それでは、まず鹿の利用の現状から見ていきましょう。

現在、日本の鹿は増えすぎている状態にあります。

1989年に31万頭だった推定個体数はどんどん増え始め、2014年にはピークの289万頭に達しました。

そこから鹿の頭数はやや減少しています。

ですが今後も狩猟によって個体数を減らす必要があります。

鹿の利用率は10%程度

現在では鹿やイノシシの捕獲に報奨金が出ています。

よって動物の捕獲数は年々増加してます。

ですが捕獲した後の利用については、まだ進んでいるとは言えません。

実は捕獲された鹿のほとんどは地面に埋められたり焼却処分されています。

鹿は年間56万頭捕獲されていますが、その中でも利用されているのは7.4万頭。

利用率で換算すると、10%ほどなのです。

あかりんご

せっかくなら、有効に活用したいです!

ヒントは畜産にある?

近年よく使われている「ジビエ」という言葉は、野生鳥獣の肉というフランス語です。

野生の動物の命をいただくからには、全ての部位を余すことなく使うという意味が込められています。

ですが、日本では鹿の利用率が10%ほど。

この利用率は、鹿肉の需要が少ないことや利用の仕組みができていないことが原因と私は考えています。

何か改善案はないか、どのように活用していったらいいのか。

そこで肉や皮、骨まで余すことなく有効に活用できている畜産、特に鹿と近縁の牛をヒントに考えていくことにします。

牛から学ぶ活用法

それでは家畜である牛はどのように利用されているのでしょうか?

まず、牛は解体場でお肉になります。

それでは、お肉になるまでの過程をザックリ紹介します。

  1. 素早く放血
  2. 肉にならない部分を落とす
  3. 皮を剥ぐ
  4. 体を半分に割る
  5. 熟成
  6. 肉を骨から外す
  7. 細かくカット

この生産段階で発生するのは大きく分けて肉、内臓、骨、皮の4つ。

それぞれについて、利用の流れを見ていきましょう。

カットチャートが確立している肉利用

肉はできるだけ余りが出ないようになっています。

つまり各部位を効率的に利用できるカットガイドが確立されています。

これに従い肉をスライスすることで無駄のない商品を作り、販売できるのです。

ステーキ用、焼肉用、カレー用などで薄さや大きさが異なるため消費者は献立に合わせて肉を選ぶことができます。

ホルモンとして流通する内臓

内臓は肉とは別ルートで流通します。

と畜した時点で内臓専門の業者に引き渡され、焼肉屋さんなどの小売店に卸されるのです。

これは肉が熟成を経て美味しくなるのと反対に、内臓は新鮮さが重要だからです。

丁寧に処理された内臓は、部位ごとに切り分けられます。

センマイ、ハチノスなどは牛の胃、ハラミ・サガリは横隔膜、コブクロは子宮といった様々な種類が余すことなく流通しているのです。

あかりんご

ミノやセンマイは牛の胃だったんだね!詳しくはこちらの記事を参考にしてね!

【反芻動物(はんすう)】鹿や牛はなぜ草だけで生きていけるのか? こんにちは! 大学で牛の勉強をしている、あかりんご(@akaringo252588)です! 皆さん、なぜ牛や鹿は草...

これらは関東ではモツ、関西ではホルモンと呼ばれ全部で上記も含め28種類もあります。

骨まで無駄なくエキスで活用

骨は、エキスの製造などに使われています。

エキスとは、素材から香りや風味に関わる成分を抽出したものです。

これらは骨を長時間煮込むことで抽出できます。

エキスはオイルと共に即席ラーメンなどの基礎調味料として広く用いられています。

またエキスを炊き出した後に出る骨を乾燥処理し、肥料原料として商品化している会社もあります。

傷の少なく大きな牛皮

皮は専用の機械で剥ぎ、加工業者へと送られます。

牛はほとんどの場合、人や牛同士で傷つけないために角が除去されているので、皮についている傷は少なくなります。

また牛革にも様々な種類があり、子牛の皮であるカーフスキンや生後3年以上経過した去勢されていないオス牛のブルハイドなどに分けられています。

これにより、用途に応じた皮を選択することが可能なのです。

鹿の隠れたポテンシャル

それでは、牛の利用を参考に鹿の利活用を考えてみましょう。

鹿革、鹿肉、鹿の骨、鹿の内臓について見ていきます。

高品質でも集積に課題がある鹿皮

鹿革は繊維が細かく柔らかいのが牛革とは異なる点です。

また吸湿性にも優れ、水と油の汚れを同時に拭き取ることができるため、衣類や小物だけでなく生活に役立つ商品化が期待できます。

その例として、鹿革を使った洗顔クロスなどの販売が行われています。

ですが鹿革を利用する時の懸念点は、集積です。

牛では1日に何十頭と処理を行うため、輸送や加工をまとめて行うことができますが、野生動物となるとそうはいきません。

猟師さん個人では大量の皮を取引することは難しいのです。

ジビエ加工施設においても、皮を冷凍保存しておくスペースが必要です。

よって大量に皮を集め、生産コストを下げる努力は必要になると考えます。

鹿肉のポイントは、機能性

鹿肉は牛肉に比べ低脂質かつ高タンパクで、鉄分が豊富だと言われています。

そんな機能性の高さが認められ、介護食などにも活用されています。

しかし未だ鹿肉は臭くて硬いといったイメージを持っている方も多くいらっしゃいます。

まずは食べてもらうことを目標に、少しずつ鹿肉を食べられるという認識を広めていくことが大切なのではないでしょうか。

鹿肉のロースト

また、鹿肉はブロック肉での販売も可能です。

よってカットガイドなどとセットで販売し、買った人が肉を捌く経験を販売するのも面白いと思います。

一般消費の需要が牛肉や豚肉、鶏肉で満たされている今、鹿肉の需要を拡大させるにはこのように肉以上の付加価値をつけることが必要だと私は考えています。

ドッグフードへの利用が盛んな鹿骨

鹿骨については、ドッグフードへの活用が主なところです。

牛骨のように煮込んでエキスを抽出することも可能ですが、やはりここでも量が問題になってくるかと思います。

小規模なジビエの食肉加工場が横に繋がり、まとまった量を確保することが活用の条件になってくるのではないでしょうか。

犬の整腸に効果的な内臓

内臓については、食道がペットフードとして利用されたり、肝臓や腎臓が食用として食べられたりしています。

中でも鹿の胃は犬にとって整腸作用があり、近年注目が集まっています。

一方、食用に回すにはやはり手間がかかるそうです。

畜産業のように内臓を取り扱う専門業が生まれればスムーズに流通が進むのではないかと思います。

さいごに

今のジビエ業界は課題が山積みだという印象を持っている方も多いかもしれません。

ですがそれは裏を返せば、無限に改善方法が存在することです。

しかもその方法によっては牛や豚をも超える価値を生み出すことができるのではないかと私は考えています。

皆さんも、鹿が持つ可能性を考えて頂けたら嬉しいです。

何か面白い案が思いついたら、是非私に教えてくださいね!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

今回のまとめ
  • 捕獲頭数は増加しているものの、利用が追いつかず利用率はわずか13%。
  • 家畜の牛は肉や骨を余すことなく活用するルートが確立されている。
  • 鹿資源は家畜とは違った機能性や付加価値の付け方がある。
ABOUT ME
あかりんご
鹿肉専門のキッチンカーSHIKASHIKA店長。神戸大学で畜産を学び牛飼いを志すも「日本で持続可能な肉とは?」という問いをきっかけに、鹿肉と出会う。鹿肉を日本の肉文化に、をビジョンに掲げ、美味しい鹿肉料理を日々提供していたが、より美味しい鹿肉を求めて現在は北海道で鹿を捌いている。