こんにちは!
大学で牛の勉強をしている、あかりんご(@akaringo252588)です!
皆さん、なぜ牛や鹿は草だけで生きていけるのだろう、と考えたことはありますか?
なんと、その理由は牛や鹿だけが持つ4つの胃にあります。
そこで今回は、草だけで生きていける動物について紹介したいと思います!
反芻動物とは?
牛や鹿は、反芻(ハンスウ)動物と呼ばれています。
それでは、まず反芻とは何なのでしょうか?
反芻は「はんすう」と読み、牛や羊などが一度飲み込んだ食べ物を胃から口の中に戻して、再び噛んでからまた飲み込むことを言います。
これが転じて、物事について繰り返し何度も考えたり味わったりするという意味が生まれました。
上司の言葉を反芻する…といった具合で、この言葉を使います。
牛や鹿、キリンも反芻動物!?
このような反芻を行う動物を、反芻動物と言います。
反芻動物に含まれるのは、蹄を持つ有蹄類の中でも、その数が偶数である偶蹄目。
偶蹄目にも様々な分類があり、反芻をするのはシカ科、キリン科、ウシ科、そしてラクダ科に属する動物たちです。
鹿と牛は科が違うのですが、反芻を行うという点では同じ仲間です。
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反芻動物の特徴は、草で育つこと
反芻動物の特徴は、なんと言っても草を食べて大きくなるという点です。
私たち人間は、草を食べても消化できません。
これは植物に含まれるセルロースという成分を分解する酵素を、私たちが持っていないからです。
しかし牛や鹿はこれらを分解し、栄養として取り込むことができるのです。
ではなぜ牛や鹿は草を消化することができるのでしょうか?
その謎を解くヒントは、胃です。
4つの胃について
私たちは1つの胃があるのに対して反芻動物はなんと、4つもの胃を持っています。
これこそが、草を消化できる最大の理由なのです。
それではこの4つの胃が、どのように作用しているのでしょうか?
それぞれの胃について説明していきます。
微生物の力で草を分解する第一胃
牛が食べた草などがまず入るのが、第一胃です。
別名ルーメンとも呼ばれます。
大人の牛では180Lほどの容積を持ち、成人男性がすっぽり入るくらいのスペースがあります。
実は牛の体の左半分は、この第一胃が占めています。
ここでは、細菌などの微生物が多く生息しています。
草を分解できるメカニズムとして重要なのがこれらの微生物です。
反芻動物が持つ消化酵素には、植物を分解できるものはありません。
そこでこの微生物に植物のセルロースを分解してもらっているのです。
植物のセルロースは微生物の働きにより、メタンと揮発性脂肪酸に変わります。
揮発性脂肪酸はVFAと呼ばれますが、反芻動物がこれを主なエネルギー源として用いているのです。
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ポンプの役割を担う第二胃
素晴らしい第一胃を持っている牛ですが、残念ながら微生物の力だけでは消化効率をあげることができません。
そこで登場するのが、先ほども説明した反芻です。
一度飲み込まれて胃に入った食べ物は、一定時間ごに第二胃のポンプ作用によって口へと戻されます。
第二胃はコブのような形をしておりポンプのように収縮を繰り返しているのです。
そして口で唾液と咀嚼することで食べ物は細かく砕かれ、微生物に分解されやすくなるのです。
牧場に行ったことのある方は、牛が口をモグモグさせている光景を見たことがあるかもしれません。
口をモグモグするのは、ある程度消化した食べ物を口に戻して飲み込む反芻の動作なのです。
反芻は1日に6〜10時間にも及ぶと考えられており、反芻をした時間によって牛の体調を管理するシステムも存在しています。
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消化の進行速度を調節する第三胃
第三胃はある程度消化が進んだ草が流れ込みます。
第三胃はヒダがたくさんあり、それが葉っぱのように見えることから葉胃とも呼ばれます。
この大きさの異なるヒダは機械的に食べ物をすりつぶす働きを持つ他、大きい食べ物の塊を長く留まらせ、消化の進行速度を調節する働きもあると考えられています。
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消化酵素が分泌される第四胃
第四胃では、人間の胃と同じように胃酸やタンパク質分解酵素が分泌されています。
食べ物についてきた微生物もここで分解され、腸で吸収されるのです。
このように、第一胃で微生物によるセルロースの分解が行われることや4つの胃で徹底的に分解する機能が備わっていることにより、牛や鹿は草だけで生きていけるのです。
豆知識 シバと反芻動物の密接な関係
ニホンシバは日本でも広く自生しているシバで、各地の山に見られます。
このようなシバの種子は、何もしない自然下では発芽率が10%にもなりません。
なぜなら種子の外皮が硬く、発芽できないのです。
ここで関わってくるのが、なんと反芻動物。
シバの種子は、反芻動物がそれを食べて反芻を繰り返すことで外皮が柔らかくなり、発芽しやすくなるのです。
そのため反芻動物の体内を通り抜けた種子の発芽率は40〜50%にまで上昇するのです。
これは鹿などの反芻動物が古くからシバと共生してきた証だと考えられます。
牛と鹿が食べているものには違いがある
同じ4つの胃を持っている鹿と牛ですが、両者が食べているものは実は全く違います。
家畜の牛が食べるのはエネルギー量の高い餌
家畜として飼われている牛は、粗飼料と濃厚飼料の大きく分けて2種類の餌が与えられます。
草をもとに作られた餌で、牧草やワラなどが挙げられます。これらを乳酸発酵させたサイレージも粗飼料の一種です。こちらが牛の主食になります。
家畜として飼われている牛は、お肉をとるために育てるかお乳を絞るために育てられます。よってタンパク量や炭水化物の豊富なトウモロコシ、大豆、フスマなどの濃厚飼料を与えられるのです。
効率よく美味しいお肉や牛乳をもらうために、この濃厚飼料は欠かせないものになっています。
しかし濃厚飼料に使用されるトウモロコシや大豆は日本で栽培が難しく、国内自給率は15%以下となっています。
つまり現在の畜産は海外の資源に頼りながら行っているのです。
野生の鹿は、日本の資源で育つ
対して野生動物である鹿は、日本の山の資源を食べます。
海外から輸入したものは食べないため、純国産と言えるでしょう。
そんな鹿の食性は広く、草の葉や茎、実、樹木の葉などを採食し、食べられる植物の種類は1000を超えると言われています。
牛肉、鹿肉は同じお肉という分類ですが、そのお肉を作っている動物が食べているものは全く違うのです。
こういった餌の違いなどにより、鹿肉と牛肉の成分はかなりの差があります。
ジビエと家畜肉について気になった方は、こちらをご覧ください!
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- 反芻動物とは、胃が複数あり反芻をする哺乳類のことを言う。
- 牛や鹿は胃が4つあり、セルロースを分解できる。
- 牛と鹿が食べているものは全く異なる。
反芻動物に秘められた持続可能性
反芻動物の偉大な発明、4つの胃と反芻について紹介しましたが、いかがでしたか?
牛や鹿などの反芻動物は、人間にとってとても有益で持続可能なサイクルを作ってくれる重要な存在です。
つまり人間が消化できない草を食べ、牛乳やお肉といった形で私たちが生きていくためのタンパク質を提供してくれるのです。
また牛が提供してくれる堆肥は、畑で作物を育てる時の栄養素になります。
SDGsなどの認知が広がってきた中、食料生産の場においても持続可能性というのがキーワードになってきます。
牛や鹿などの反芻動物は、こういった持続可能を達成するために重要な存在であると私は考えています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!