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鹿革は最も馴染みのある革だった?日本での鹿革の歴史を解説!

こんにちは!あかりんご(@akaringo252588)です!

皆さん、鹿革を使ったことはありますか?

現在、鹿革は珍しいものになってしまいました。

ですが、江戸時代までは革といえば鹿革のことでした。

そこで今回は日本での鹿革の歴史を解説します!

また、なぜあまり使われなくなったのかについても、

考察していきたいと思います。

鹿の革がもつ高い機能性

実は鹿の革はとても機能性が高いことで有名です。

その秘密は繊維の細かさにあり、

これにより、吸湿性保湿性に優れた手触りの良い革が生まれます。

”革のカシミヤ”

このような言葉で表されることも多いですが、

そのぐらい滑らかな質感や肌触りがいいのです!

さらに、繊維は細やかですが強靭で、長持ちするのもポイントです。

鹿紐と言われ、数ミリの太さの紐も、

人の力で伸ばして切れることはほぼあり得ません。

また水と油の汚れを同時に拭き取ることができるなど、鹿革はとても使いやすい革と言えます。

鹿革の長い歴史

それでは、日本で鹿皮がどのような利用をされてきたのかを見ていきましょう。

ここでは、古代から江戸時代まで時代ごとに紹介します。

皮なめしは弥生時代後期から始まっていた?

日本で最も古いなめし革に関する記述は『日本書紀』にまで遡ります。

「今、倭国の山辺郡額田邑の熟皮高麗は是れ其の後なり」

現代語訳:今、大倭国の山辺郡の額田邑(現在の奈良県)という場所にいる皮をなめして作る集団はこれの子孫です。

つまり皮をなめして加工する工場のようなものが、現在の奈良県にあったということですね。

この記述より、日本の革生産は弥生時代後期から古墳時代に始まったとされています。

当時、野生動物の狩りは弓矢や槍を使って行われていました。

その中でも矢で仕留めることができた鹿の皮は傷が少なく、皮資源として重宝されたことでしょう。

奈良時代には皮押し文化が生まれる

奈良時代には、皮押しに堪能な職人が寺院や役所に付属する工房で働いていました。

皮押しとは、凹凸を刻印した鉄板で加圧し、革の表面に種々な凹凸模様をつけたものです。

この頃は鹿革だけでなく牛革やクマ革、馬革も用いられるようになりました。

鹿革の名産地が生まれた平安時代

そして平安時代には、各地で革の名産地が生まれます。

『延喜式』という書物では比較の名産地として43か国が上がっており、その中でも鹿革の名産地は35か国、牛革の名産地は14か国でした。

この記録からも、当時は牛革よりも鹿革の方が皮革加工が盛んだったことが読み取れます。

豆知識

この頃、植物タンニンなめしが使われるようになりました。

タンニンは植物に含まれるポリフェノール化合物の一種。

タンニンなめしとはこのタンニンによって皮のタンパク質が変性し、なめされるという原理です。

このなめし方は現在でも行われており、この製法を使うと硬くて丈夫でコシとハリがあるのが特徴です。

武具として必須の革製品

鎌倉時代には武具製造に不可欠のものとしてなめし技術はさらに向上していきます。

兜の内張や革足袋などに使われたのはやはり鹿革。

矢を背負うための入れ物に鹿の毛皮を用いて矢が濡れるのを防いだり、武具に用いられることも増えていきました。

戦国時代には戦いに備えて皮革の需要が急速に高まります。

各地の戦国大名は競って優秀な革職人を確保し、城下町の周縁地域に職人を住ませました。

これにより武士だけでなく庶民にも革でできた巾着などが広まりました。

江戸時代には革製品が庶民にも浸透

江戸時代では武具としての需要が減ったため、皮革産業は衰退傾向にありました。

しかし庶民の鹿革需要は耐えることなく、文房具などの革小物が庶民の生活に浸透していったのです。

現在の鹿革事情

古代から江戸時代における鹿革の利用方法を説明してきましたが、現在はどうなのでしょうか?

残念ながら現在、鹿皮の利用率はわずか1%ほどだと言われています。

ここからは、なぜ利用率が上がらないのかについて考察したいと思います。

皮が革になるまで

考察を始める前に、鹿の皮がどのような過程を経て革に変わるのかを見てみましょう。

主な流れはこのようになります。

  1. 捕獲
  2. 皮を剥がす
  3. 皮についている肉を剥がす
  4. なめし
  5. 乾燥

このような過程を経て、動物の皮は革へと変化します。

ここで皮とは、動植物の表面を覆う一枚の膜のことを指します。

動物から皮を剥いだままの状態というのは、微生物が食べられるということです。。

微生物が食べるということは、つまり腐敗するということです。

これに対して革は動物の皮から脂肪や毛を除いた後、腐敗しないように加工したものを言うのです。

そして皮を微生物が利用できない状態にする過程のことを、なめしというのです。

現在、皮をなめす方法は何十枚と皮を集め、一緒になめす大量生産が主流になっています。

こういったドラム缶で回しながら革へ加工します。

なめし方についてはこちらで詳しく触れていますので、気になった方はチェックしてみてください。

利用率1%の理由は「代替」と「集積」

日本の歴史で重宝されてきた鹿皮ですが、現在ではそのほとんどがなめされる前に廃棄されています。

その原因は、大きく2つあります。

一つ目に畜産業の発展です。

明治時代以降に畜産が発達し、肉の副産物として牛革や豚革の利用ルートが確立されました。

このようにして、安くて大量に生産できる牛革の利用が一般的になっていきました。

これにより、鹿皮が家畜皮に取って代わられたのです。

二つ目に、猟師さんが捕獲した鹿の皮を集めるシステムが確率されていないことが挙げられます。

先ほども説明したように皮をなめすには一つの場所に集め一気になめす必要があります。

皮をなめす加工場は全国にありますが、牛や豚に比べるとまとまった鹿皮を用意することは難しいのです。

ただ一枚一枚単体で皮をなめしていると、それだけコストがかかって革製品が高価になってしまいます。

それを解決するためにはたくさん集めて一度になめす必要があるのですが、現在はそういった仕組みができていないということです。

さいごに

日本での鹿革利用方法はいかがだったでしょうか?

家畜皮が一般的ではなかった頃、鹿皮はその機能性からたいへん重宝されました。

普段使いのカバンから武具まで幅広く使用できる鹿革。

今ではポリやビニールの製品が安く販売されていますが、未だに革の財布などを選択する人は少なくありません。

今ではすっかりマイナーになってしまった鹿革ですが、機能性などを活かして有効に活用できるよう考えてみたいと思います。

この記事を読んで、鹿革をもっと身近に感じるいただくきっかけになったらと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

ABOUT ME
あかりんご
鹿肉専門のキッチンカーSHIKASHIKA店長。神戸大学で畜産を学び牛飼いを志すも「日本で持続可能な肉とは?」という問いをきっかけに、鹿肉と出会う。鹿肉を日本の肉文化に、をビジョンに掲げ、美味しい鹿肉料理を日々提供していたが、より美味しい鹿肉を求めて現在は北海道で鹿を捌いている。