犬を飼っている、もしくは飼ったことはありますか?。
実際、全国で飼われている犬は892万頭(※2017年)、日本の世帯数が5747.7万世帯(※2017年)で、6~8世帯に1匹程度、犬を飼っている人がいる計算になります。
筆者の実家も、犬を飼っている家の中のひとつです。
ただ、うちの犬は、一般的な愛玩犬ではありません。
猟犬でした。
猟犬とは
狩猟に用いる犬のことをいいます。
猟犬を飼う第一目的は、かわいがることではなく、「狩猟で活躍できること」です。
獲物を探し、飼い主に知らせ、狩る、もしくは狩りをサポートし、場合によっては獲物を回収する役割までを担います。
一般的なしつけをする場合もありますが、必要なのは猟にでて、猟師の望む行動ができるかどうかです。
猟犬の代表種
ダックスフントをご存じでしょうか。
日本ではかわいいペットで定着しているダックスフンドですが、ドイツ語で、アナグマ(ダックス)と犬(フント)という意味を持ちます。
ダックスフントは、アナグマを狩るための犬種として、穴に入りやすいよう手足を短く改良された猟犬です。
このように海外には猟に適した猟犬が多く存在し、さらに開発されています。
有名な外国の猟犬は、
- 英ポインター
- 英セター
- 独ポインター
- ブリタニー
- スパニエル
- 英コッカー
- スパニエル
- ラブラドール
- リトリバー
- エアデール
- テリア
- プロット
- ハウンド
- ドゴ・アルゼンチーノ
- ビーグル
などです。
日本でも、
- 柴犬
- 甲斐犬
- 北海道犬
- 実猟四国犬
- 紀州犬
などが猟犬とされています。
ただ、実際の猟犬は雑種が多く、この犬種ではければ狩りができないということはありません。
猟犬は、犬種よりも、その地域のゲーム性と、猟法を考慮して選ばれます。
鳥猟犬と獣猟犬
猟犬は、目的とする猟の種類で犬の気質が変わります。
今回は日本でも比較的多い2つの種類からご紹介します。
鳥猟犬の特徴
鳥猟犬はバードドックとも呼ばれ、主に鳥を仕留める猟に用いられます。
空や高いところにいる獲物をハンター教え、鉄砲を構えたタイミングで飛びたたせたり追い込んだりする役割を担う犬です。
攻撃性よりも、ハンターとの共同作業が得意なやさしい気質の犬が多いのが特徴になります
犬種でいうと、セッターやポインター、レトリバーなど、比較的ペットとして飼いやすい犬です。
獣猟犬の特徴
鳥以外の獣をターゲットとした猟に適した犬を獣猟犬といいます。
視覚に強い犬と嗅覚に強い犬がおり、狩る獲物にあわせた特性を持つ犬を選ぶことが重要です。
ビーグルや日本犬なども獣猟犬に適していますが、実践で使われる犬は実力のある犬同士を掛け合わせたミックス犬(雑種)が多くなっています。
足が速く、鼻が利き、自分より大きな獲物にも立ち向かうほどに勇敢で、声も通る、そんな特徴が求められます。
実際に我が家にいた犬も雑種でしたが、比較的足が長いスタイルのいい犬が多かったです。
また、犬種よりも犬の生まれ持った性質や性格も、猟に向き不向きがあります。
猟犬とペットとの違い
ペットの愛玩犬と猟犬との違いは、目的です。
ペットはそのまま愛でることで役割をまっとうしますが、猟犬は、ハンターが猟犬に育てる必要があります。
たとえば、イノシシ猟をする猟師は以下の4つの特徴を犬に求めます。
①鼻
②足(スピード)
③鳴(追い鳴き、止め鳴き)
④噛み
鼻はイノシシの痕跡をたどるのに必要です。
人間にはわからないにおいの情報を嗅覚使ってたどり、イノシシを探し出します。
そして、足のはやさ。
イノシシは時速40~50キロの速さで逃げるとも言われています。
獲物をにがさないよう、追いつける足の速さも重要なのです。
さらに重要なのが、鳴き。
イノシシを見つけた時の鳴きを「威嚇鳴き」、吠えることでイノシシを寝床に足止めする役割のことを「止め鳴き」といいます。
広大な山での犬の鳴きはイノシシと犬の状況を知る大きな手がかりとなるためとても重要です。
また、猟犬は様々な鳴き方で猟師に状況を伝えます。
細かく分類すると、
- イノシシを見つけたとき
- イノシシと正面から向き合ったとき
- イノシシを追い詰めたとき
- 臭いだけでイノシシを確認したとき
などがあります。
最後に、必要な噛み。
これは勇敢さともいえます。
イノシシに立ち向かい、威嚇しながら逃げないように牙をむくことの出来る勇敢さです。
イノシシやシカなど、自分より大きな獲物に出会うことも少なくなくない猟では、猟犬がイノシシの牙などで傷つけられることもあります。
そんな恐怖の中でも立ち向かえる気質が噛みの要素です。
猟犬を飼うメリット
そんな風に、同じ犬を飼う、でもペットとだいぶ違うのが猟犬です。
そんな猟犬を飼うメリットはこちらです。
いい猟犬で狩猟の捕獲数が大きく変わる
狩猟の成果が変わります。
罠猟をしている猟師は、獲物がかかるのを見回ったり、待ったりする必要があります。
当然、毎日獲るのは難しいです。
それが、いい犬を連れていくと連日獲れたり、一日に数頭獲れる事もよくあります。
いい猟犬に巡り合うと、猟師の捕獲数が圧倒的に変わるのです。
いい犬の種や子は高値になることも
いい猟犬の評判は、猟師仲間の中で広がります。
そんな優秀な猟犬の掛け合わせで生まれた子どもには、見た目は雑種でも高値がつくこともあります。
実績のある猟犬の子なら5~50万前後でゆずり合いが行われる(雑誌掲載などにも欄がある)こともあるのです。
猟犬で価値のある犬は、血統書などではなく、一回の猟期にその犬で30頭以上獲物を獲る実績を持つ犬などをさします。
子犬ではなくても、実績のある犬には100万前後の高値のオファーがかかることもあります。
猟犬を飼うデメリット
猟師にとって、猟の成果を上げることに直結する猟犬。
こちらではデメリットもご紹介します。
簡単に手放せない
犬はペットだろうが、猟犬だろうが、簡単には手放せません。
しかし、猟犬として育てても、実際に猟で使えない犬はいます。
猟犬は猟が目的なので、その場合手放すことになります。
里親を見つけることができれば一番ですが、中にはモラルのない猟師がいるのも事実です。
猟犬を山に放置したり、捨てたりする飼い主もいることから、猟犬がいなくなった際の届け出を促したり、マイクロチップの導入など、近年ではいろいろな対策がとられようとしています。
(※猟犬として育てると、他の獣や他人の犬や人間へ危害を加える可能性があるからです。)
食事代がかかる
猟犬を飼う目的は、狩猟です。
でも、一年の中で猟期は決まっています。
地域や獲物によって期間はかわりますが、たとえば、高知県のイノシシ猟なら11月15日に解禁となり、3月15日をもって終了となります。
猟ができるのは、4ヶ月で、1年の1/4です。
しかし、それ以外の時期も、生きものなので当然エサ代もかかるし散歩も必要です。
複数の犬を飼っている場合は、年間を通してドックフード代はもちろん、虫くだし、夏場の蚊取り線香、防注射、医療費などもかかってきます。
長期旅行に行けない
愛玩犬も猟犬もそうですが、犬と暮らすということは命に責任を持つということです。
餌や散歩が毎日のルーティーンなので、代わりに餌をやってくれるなど面倒をみてくれる人がいない場合は、長期旅行などは難しくなります。
【まとめ】いい猟犬との出会えれば猟は何倍もたのしくなる
猟師と、猟犬がイキイキしているのは、冬場の限られた猟期です。
でも、猟師と犬は一年を通してコミュニケーションをとりながらイノシシの解禁に備えて準備をしています。
小さな頃から育て、自分なりのしつけと訓練を繰り返し、現場に合わせて、猟をしていく中で犬との絆は深まり、猟の成果が上ったときの喜びははかり知れません。
猟犬を飼うことは、猟の楽しみかたを深めるひとつの手段です。
猟犬を飼いたいと考えている人は、よいパートナーを見つけ、共に高めあい、ぜひ猟の成果を上げてくださいね!