こんにちは。
神戸大学でジビエのサークル「み じ か」の代表をしている、あかりんご(@akaringo252588)です!
み じ かの活動ではマルシェに鹿カツなどを出店するのですが、その時お客様が抱えている不安トップ3がこちらです。
- 硬そう
- 臭そう
- 変な菌を持ってそう
このようにジビエは家畜肉よりも食中毒が心配だ!と思っている方も多いのではないでしょうか?
今回は、そんなジビエ肉に潜んでいる食中毒のリスクを一挙に紹介したいと思います!
そして最後には家畜肉との比較をして、本当にジビエ肉は家畜肉よりも危険なのかについて考えてみた結果についてお知らせします。
ジビエ肉に潜む食中毒の危険性
ジビエの言葉の意味とは野生鳥獣のお肉を表すフランス語です。
(※ジビエーるでは肉以外の部位も含めジビエと考えています。)
つまり狩猟で得た肉全般と言えますが、その種類は多岐に渡ります。
そこで日本でよく食べられているジビエ肉について一例を紹介します。
- 鹿
- イノシシ
- クマ
- カモ
- キジバト
- ヒヨドリ
- ハクビシン
- アナグマ
- ウサギ
定番の鹿、イノシシから鳥類、そしてハクビシンに至るまで日本では様々な野生鳥獣の肉が食べられています。
そんな美味しい、ジビエ肉に潜んでいる食中毒について、説明していきます。
E型肝炎ウイルス
こちらはイノシシ、鹿に存在しているウイルスです。
肝炎を引き起こすウイルスは様々で、E型もあればA〜Dという肝炎の種類もあります。
症状が表れるまでの潜伏期間は15〜50日(平均6週間)で、以下のような症状が出ます。
主な症状
- 黄疸
- 発熱
- 嘔吐
- 食欲不振
- 腹痛
- 全身倦怠感
このウイルスは経口感染するので、不完全な加熱によって感染リスクが高まります。
しかし、加熱をするとE型肝炎ウイルスは感染性を失うので、しっかりと加熱をすれば感染することはほとんどありません。
カンピロバクター
鶏肉が引き起こす食中毒として有名なカンピロバクター。
主に鳥類やイノシシの消化管に存在しています。
潜伏期間は2〜7日で、以下のような症状が出ます。
主な症状
- 頭痛
- 倦怠感
- 発熱
- 腹痛
- 激しい下痢
- 嘔吐
カンピロバクターは動物の消化管に存在しているため、解体の際に腸管にいる菌が肉へ付着したことにより、経口感染の原因となります。
こちらも加熱によって防ぐことができます。
旋毛虫(トリヒナ)
イノシシやクマなどの野生動物に寄生する線虫で、過去にはクマ肉のルイベや刺身による食中毒が発生しています。
ルイベとは冷凍保存した食材を凍ったまま薄切りにした刺身のことです。
つまり、原因は加熱不十分な野生動物の肉によって引き起こされます。
こちらは病原体が線虫なので、発症には時間がかかります。
主な症状(時間の経過に合わせて)
- 感染後1〜2週間 腹痛 下痢 発熱
- 感染後2〜6週間 まぶたの腫れ 筋肉痛 発熱 ときに呼吸困難
- 感染後6週間ごろ 顕著なまぶたの腫れ 貧血 肺炎 心不全など
豚レンサ球菌
イノシシに見られる病原体です。
感染すると敗血症や髄膜炎、心内膜炎、肺炎などの病態を示します。
食肉処理に従事している方は感染のリスクが高く、感染したイノシシの皮膚の外傷、または肉に接触した時に感染すると考えられています。
主な症状
- 頭痛
- 嘔吐
- 全身倦怠感
- 意識障害
- 悪化すると化膿性髄膜炎
イノシシを解体したハンターが感染した事例もあるので、注意が必要です。
予防法としては、以下の3つが挙げられます。
- 手指に外傷のある人は手袋を着用する
- イノシシ肉、豚肉を調理した際は手洗いと調理器具の洗浄を徹底する
- 肉表面だけでなく内部まで火を通して食べる
ノウサギ病
これは野ウサギが持っている野兎病菌によって引き起こされる急性熱性疾患です。
生物テロに使用される可能性のある病原体としてリストアップされるなど、留意すべき感染症の一つと言われています。
主な症状
- 突然の発熱
(感染3日目をピークとした1週間以内) - 悪寒
- 頭痛
- 筋肉痛
- 関節痛
感染力は非常に高く、目などの粘膜部分や皮膚の細かい傷はもちろん、健康な皮膚からも侵入できるのが特徴です。
予防法としては野ウサギなどの齧歯類(げっしるい)との接触には手袋を用いることが挙げられます。
【豆知識】感染と発症の違い
微生物が体の中で増えることを、「感染した」と言います。
つまり人の抵抗力よりも病原体が病気を起こそうとする力が強くなると感染が成立するのです。
感染した結果、発熱や腹痛などの症状が現れることを「発症」と言います。
そして感染から症状が現れるまでの時間を潜伏期と言います。
しかし感染しても症状が現れないこともあり、これを不顕性(ふけんせい)感染と言います。
こういった人は自身が感染していることに気付いていないため、他の人に菌を移してしまうキャリアーになることもあります。
どうやって食べたら安全なの?
合言葉は75度で1分以上!
これまで食中毒について説明しましたが、肉は加熱調理すれば安全に食べることができます。
それでは、十分な加熱調理とはどういうものなのでしょう?
十分な加熱調理とは、中心部の温度が摂氏 75 度で 1 分間以上又はこれと同等以上の効力を有する方法
厚生労働省「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/niku/jibie/guideline.html」
ここで重要なのが、中心までしっかり加熱するということ。
中心温度の測定は、デジタル温度計を肉の最深部まで差し込むという方法が一般的です。
塊肉であれば、調理している中で最も大きい肉の中心温度を測っておくと安心でしょう。
表面はこんがりでも中は生!
ってこと、意外と多いです!
食中毒かも?と思ったら
激しい嘔吐や腹痛、発熱といった食中毒の症状が出たらどうすればいいのでしょう?
まずはできるだけ早く病院に行きましょう。
余裕があれば食べたものや食品の包装紙、吐いたものを残しておくと食中毒の原因が特定しやすくなります。
特に小さな子供やお年寄り、妊婦の方は症状が急変する場合があるので自分たちで判断せずに病院へ行くことが大切です。
また下痢や嘔吐をしたら、水分補給を積極的に行いましょう。
脱水症状に陥ると、不要になった老廃物を排出したり体温をコントロールするのが難しくなります。
ジビエ肉だけが危険なのか?
これまで野生動物が持つ病原体についてお話ししてきましたが、家畜と比べて病原体の保有率はどうなのでしょうか?
ここではE型肝炎ウイルスについて説明したいと思います。
E型肝炎ウイルスにおいてイノシシ、豚、鹿で調査を行ったところ、以下のような結果になりました。
E型肝炎ウイルスの抗体検査では豚が100%、イノシシは地域差があるが10〜50%、鹿はほとんど保有していなかった。
参考:https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/08/h0819-2a.html
このように、保有率だけで見ても野生動物より家畜の方が高いという事例もあります。
野生動物だけではなく肉全般には人に対して深刻な病気を引き起こす病原体が付着しています。
ジビエ に限らず肉はしっかり加熱して美味しく食べましょう!
まとめ
- 病原体は肉表面だけでなく、肉の内部にも存在する。
- 接触するだけで感染する病気もあるので、手袋の着用を心掛ける。
- 調理する際は中心温度を基準に考える。
ジビエで食中毒を出してしまえば、ジビエ業界全体に影響が出てしまいます。
私もサークル活動としてマルシェなどに出店する時は細心の注意を払って衛生管理をしていました。
ジビエ肉を身近に感じる人が増えるためには、安心・安全を築き上げていくことが必要だと考えています。
この記事を読んで加熱処理をしっかりしようと思っていただければ幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!