こんにちは!
鹿ライターの、あかりんご(@akaringo252588)です!
平成の時代に入ってから、日本に住む野生の鹿の数はどんどん増えてきました。
最近では鹿を獲ることが推進されているため、鹿の数は減少傾向にありますが…
昔と比べると増えすぎているのが現状です。
でも、もとを辿れば、なぜこんなに鹿が増えたんだろう。
一度は気になったことがありませんか?
実はこれに、林業が大きく関わっているんです。
今回は戦後から現在にかけて鹿が増えた原因を、林業という視点で考えてみたいと思います。
- 国有林:国民共通の財産として国が管理する森林。
- 天然林:自然の力により形成、成長していく森林。(⇔人工林)
- 高度経済成長:戦後1955年〜1973年まで続いた経済成長率の高かった時代のこと。人口増加などによって木材の需要が急増。
鹿は平成に入り急増した
それではまず、鹿の頭数の移り変わりについて説明していきます。
このグラフは、環境省が発表する鹿の推定個体数です。
平成元年の1989年から2014年の25年間で、鹿の頭数が9倍になっていることが分かります。
平成元年では26万頭だった鹿は、2014年には246万頭と推定され、数字の桁をまたいで急増しました。
加えて、このグラフも環境省により調査された鹿の分布域の移り変わりです。
1978年は昭和53年にあたり、この年の調査では濃い緑色に鹿の分布が確認できたそうです。
続いて2014年、2020年と調査がされ、新たに生息が確認された場所にそれぞれオレンジ、赤色がついています。
このグラフから分かるのは、鹿の分布域が拡大しているということです。
昭和 53 年度(1978年度)から平成 30 年度(2018年度)までの40年間で、鹿の分布域ば約2.7倍に拡大しています。
これらから、鹿の頭数が増加しているだけでなく、鹿の分布域も拡大していることが分かります。
その理由としては、現在いろいろな説が議論されています。
- 猟師数の減少
- 温暖化
- オオカミの絶滅
- 中山間地の人口減少
- 森林の開発
などなど…
今回はこの中から、林業が鹿の頭数増加に影響を与えたのではないかという視点からお話ししていこうと思います。
戦後の林業と鹿の関係
日本では戦争の混乱がおさまった1955年から、高度経済成長期が訪れます。
1973年まで続いた経済成長率の高かったこの時代には、人口がグングン増加しました。
このグラフを見て分かる通り、経済成長期である1955年から1973年にかけて人口は1000万人ほど増加し、その後も増え続けていきます。
経済も軌道に乗り、家を建てたいという需要が一気に高まったのです。
ですがこれに対して、木材の供給は追いついていませんでした。
よって一般的な物価に比べ木材の値段は高騰し、変動が激しかったのです。
これをうけ、木材の生産地を拡大させる動きが出てきました。
これにより、広葉樹林の伐採跡地に成長の速い針葉樹を植林する拡大造林が実施されたのです。
このグラフは、人口造林面積の推移です。
ここから分かるように、高度経済成長期中の1955年から1960年に木材の生産地拡大はピークを迎えます。
1960年には40万haが造林され、そのほとんどが拡大造林でした。
ちょうど滋賀県と同じくらいの広さです。
そしてこれが、鹿が増加する原因となったのです。
木を切ると鹿が増える!?
あれ?森林を伐採したらなぜ鹿が増えるの?
こう思った方もいるのではないでしょうか?
一般的に木が生えている森の中は暗くなります。
それは高く伸び、大きな葉っぱをつけた樹木が光を遮っているからです。
ですが木を切った後は、今まで木の影になっていた部分にも日光が差し込みます。
すると日光がなくて育つことができなかった草や低木が生え始めます。
よって、伐採後の土地には栄養価の高い草などが広がるのです。
これが鹿のエサとなり、それまで絶滅に瀕していた鹿の栄養状態はとても良くなります。
人間による狩猟は続いたものの、エサが増え鹿は数を少しずつ増やしていったと考えられます。
林業の衰退が鹿増加を加速させた
昭和40年代になると、高度経済成長の下で木材需要は拡大を続けます。
そこで木材輸入の自由化に伴い、外国から丸太の輸入が進みました。
さらに昭和50年代には木材需要が頭打ちに、そして昭和60年代以降は円高が進み、木材製品の輸入がさらに拡大します。
外国材の輸入、そして山村の過疎化が相まって、林業生産活動は低迷していきます。
その証拠に、日本の植林面積はこのように変化しています。
時代 | 植林面積 |
---|---|
高度成長期 | 約40万ha/年 |
1990年 | 約7万ha/年 |
2000年 | 約3万ha/年 |
植林面積が減少しているということは、伐採した分を植林するというサイクルが崩れることになります。
まさに、林業の衰退です。
この林業の衰退も、実は鹿の増加に関わっているんです。
林業が盛んだった時代は中山間地の人口は今より多く、貴重なタンパク源を得るため狩猟にも熱心でした。
また里の近くだけではなく、もっと森林の奥地へ開発を進めていこうという動きもあったので、人が森にどんどん入っていたのです。
つまり人が鹿の捕食者となり鹿が増えすぎているのを抑えていたとも言えます。
しかし林業が衰退したことによって、鹿と人々の関わりは希薄になりました。
これにより鹿の捕食者がいなくなり、数が増えたとも考えられるのです。
豆知識:農作物被害と農業の変化
また近年問題となっている獣害。
こちらも、農業のあり方が変化したために起こったと考えられています。
食糧が不足していた時代は、田畑で作った作物は全て回収して使っていました。
しかし現在では質や見た目によって選別する時代になってきたのです。
選別され間引かれたものは畑に取り残されることも少なくありません。
多く作りすぎた時には、生産量の調整として作物をそのまま踏み倒すこともあります。
テレビやニュースなんかでも、苦心しつつ生産量を調整する農家さんがたまに取り上げられるよね。
それが鹿などに食べられる前になくなれば問題ありませんが、そういった田畑が動物にとって最高の餌場となっているのは事実です。
一度味を覚えてしまった鹿は、何度でも畑に足を運びます。
近年獣害が増えているのは、鹿増加だけでなく人為的な要因もあるのです。
森を作ることはジビエを作ること
現在、アマゾンでの森林伐採が環境破壊を引き起こしていると問題になっています。
日本でもそういったニュースはテレビから新聞まで広く扱われており、森林伐採=悪だと思う方も多いのではないでしょうか?
実は私も、その1人でした。
しかし日本に目を向けてみると、日本では林業用の森林が管理されなくなったことで様々な問題が発生しています。
日本は、木を積極的に切っていかなければならない状態なのです。
林業は切ったら植えるというサイクルを繰り返して成立する、持続可能な産業だと言われています。
日本は資源に乏しいと言われていますが、国土の3分の2が森林であるように、森林資源には恵まれているのです。
持続可能な社会を目指すSDGsの必要性が高まっている今現在、日本の森林から見つめ直すというのは重要なことだと私は思っています。
そしてジビエーるで取り扱っているジビエにも、森林は関係します。
森林に生えているものしか、鹿やイノシシは食べないのです。
森を作ることは、ジビエを作るということ。
今回はそんな、鹿と森林の関係を知っていただきたくこの記事を書きました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- 伐採後の土地では栄養価の高い草などが生え、それを鹿の餌場となった。
- 外国から木材を輸入したため国産材が価格競争にさらされる。
- 林業が衰退して山に人が入らなくなっていく。
- 人間と鹿の関係が希薄になっていき鹿の個体数増加に繋がった。