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養鹿場とは?鹿を飼育するメリットと養鹿場の歴史

こんにちは!

大学で畜産を勉強している、あかりんご(@akaringo252588)です!

皆さん、全ての鹿は野生動物だと思っていませんか?

日本では野生動物という印象が強いですが、実は中国やニュージーランドでは本格的な養鹿(ようろく)産業が成立しています。

養鹿とは鹿を家畜化して育てることを言います。

実は日本でも養鹿が行われたことがあり、今回は日本の養鹿の歴史についてお話ししたいと思います。

養鹿のメリットやなどにも触れながら説明するので、最後まで読んでいただければ嬉しいです。

養鹿場で鹿を飼育するメリット

まず、鹿は狩猟でも利用することができます。

これに比べて、養鹿場で鹿を飼育するメリットは何なのでしょうか?

鹿茸、鹿肉、鹿革の生産についてそれぞれ説明していきます。

最強の漢方 鹿茸を生産できる

まずは鹿茸(ろくじょう)の生産です。

鹿茸とは、成長途中のオスの角

オスが持っている角は秋に骨化して硬くなります。

そうなる前に切り取ったものが、鹿茸です。

この鹿茸は、中国で高級漢方の材料として使用されていました。

鹿茸の効果には、以下のようなものがあります。

  • 心臓機能を常態に改善
  • 消化器官系統の機能保温
  • 腎臓機能の促進
  • 筋肉の疲労回復
  • 精力増進

とても色々な効果があることが分かります。

つまり、鹿茸は最強の漢方薬だったのです。

ですが鹿茸は通年採取できる訳ではありません。

鹿の角が成長途中にある時期しか取れないのです。

よって狩猟では、大量の鹿茸を確保するのが難しくなります。

ここが養鹿と狩猟の違いになります。

たくさん肉が取れる

狩猟で捕獲した鹿は、肉の利用においてハードルが高いと考えられます。

例えば、銃猟で捕獲する場合は銃弾が腹部に当たってしまうとその部分は食べることができません。

くくり罠においても、くくった足の付け根までは内出血がひどくなります。

加えて鹿の歩留まりは、季節的な変動が大きくなります。

これは夏と冬で鹿が食べる餌の量が変化することが原因です。

餌の豊富な夏はよく食べますが、猟期として定められている冬になると採食量が減り、皮下脂肪や筋肉が少なくなるため肉の品質は落ちます。

これに対して養鹿では家畜と同じように処理されるため全身を使うことができます。

また、餌の量をコントロールして一番良い状態で出荷するので狩猟で獲るよりも歩留まりは高くなります。

こういった点でも、戦略的な鹿肉生産を行うには養鹿の方が適していると言えます。

傷の少ない鹿革生産ができる

今では牛革や豚革が一般的ですが、江戸時代までは革といえば鹿革という時期もありました。

鹿革は薄く滑らかで柔らかいため、足袋などの衣類に重宝されたのです。

しかし野生の鹿は木々などに体が擦れたり、オス同士で争った際に傷を負って皮に傷がつくことがあります。

皮に傷があると価値は格段に下がってしまいます。

よって狩猟で得た野生の鹿皮の利用は進んでいません。

一方で養鹿では怪我をしにくい環境であるため皮が傷つきにくいのです。

このように傷の少ない高い品質の鹿革生産という点においても、養鹿は有利だと言えます。

日本の養鹿場の歴史

それでは日本の養鹿の歴史を見ていきましょう。

日本で最初の養鹿場は大正時代の1925年。

大正時代にできた養鹿場は1か所だけで、1961年以降にはいくつかの養鹿場が開設されました。

その目的は観光用でした。

1970年には野生の鹿の保護と利用を目的に北海道で養鹿場が作られました。

これが日本初の管理を意識した養鹿で、鹿を捕獲して養鹿場で飼育するというものでした。

この頃から、養鹿という言葉が使われるようになります。

1975年には村おこしとして鹿茸や鹿肉の利用が推進されました。

そして1980年には飼育された鹿肉・イノシシ肉の専門店の経営を始めます。

よって店舗の隣には養鹿・養猪場がありました。

平成に入り加速する養鹿

次第に養鹿牧場は増えていき、1989年には34ケ所だった養鹿場は、1994年で90ケ所になりました。

年(平成)元年2年3年4年5年6年
飼育頭数(頭)205831984111480248595900
養鹿場における鹿飼育頭数の変化

この表は平成に入ってからの養鹿場における鹿飼育頭数の変化です。

年々飼育頭数が増加していることが分かります。

飼育頭数がこのように増えたのは、1991年(平成3年)に農水省によって鹿が特用家畜に認められたことが大きな要因です。

特用家畜とは、一般的に流通している牛豚鶏など以外に、その動物の特性を利用して特定の地域で使用、肉皮等に利用しているものとされています。

ここから養鹿の研究会が発足し、全国で鹿の飼育を始める場所がさらに増えました。

日本の養鹿の特徴

この頃の養鹿の特徴としては、以下が挙げられます。

まず、公的機関や農協などの法人が行う養鹿が多いこと。

そして鹿の飼養目的は27.4%が観光目的18.7%が試行的飼養や鹿茸生産であること。

あかりんご

実際は鹿茸生産を目的にしながらも鹿肉生産がメインだったところも少なくなかったみたい!

それは日本の薬事法が関係しているよ!

詳しくはこの記事を参考にしてね!

このように日本では養鹿の文化が根付く基盤が整えられていったのです。

飼育頭数や養鹿場数も増えていた平成初期はまさに養鹿のピークでした。

養鹿ブームから一転

しかし養鹿ブームが一転したのは、2011年にBSEが発生してからでした。

BSEは牛海綿脳症という牛の病気で、感染すると脳がスポンジ状になり異常行動や運動失調を示し死亡するものです。

それを受け消費者は食肉を買い控えるようになり、畜産業界は打撃を受けます。

当時、大半の養鹿牧場は規模が小さく補助金頼りの経営でした。

BSEによって牛を飼育する畜産農家の補助が必要になると、養鹿への補助金はストップしてしまいました。

これにより養鹿経営は急速に勢いをなくしていったのです。

ですが現在でも養鹿を行っている牧場はあります。

北海道の西興部(にしおこっぺ)にある鹿牧場や長崎県の雲仙鹿牧場などがあります。

さいごに

鹿は牛と比べて家畜として優れている点が2つあります。

一つ目は安産が多いこと。

そして二つ目は飼料の利用効率が良いことです。

トウモロコシや大豆などエネルギー量が高い飼料を与えなくても体が大きくなるということです。

日本では養鹿文化が根付く前にブームが終わってしまいました。

ですが鹿肉を安定的に提供するための一つの方法として、養鹿はアリなのではないかと私は考えています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

今回のまとめ
  • 養鹿は狩猟に比べて鹿茸、鹿肉、鹿革などを効率よく生産することができる。
  • 平成に入り鹿が特用家畜に認定されてからは、養鹿ブームが起こった。
  • 2011年のBSE発生により国の補助金が打ち切られ、小規模で育成段階だった養鹿場は姿を消していった。

ABOUT ME
あかりんご
鹿肉専門のキッチンカーSHIKASHIKA店長。神戸大学で畜産を学び牛飼いを志すも「日本で持続可能な肉とは?」という問いをきっかけに、鹿肉と出会う。鹿肉を日本の肉文化に、をビジョンに掲げ、美味しい鹿肉料理を日々提供していたが、より美味しい鹿肉を求めて現在は北海道で鹿を捌いている。