ジビエをもっと、あなたらしく。
ジビエを食べる人、つくる人、届ける人。 すべての人に、エールを。
シカ

オオカミ導入で鹿管理!?イエローストーン国立公園の事例を紹介します。

こんにちは!

あかりんご(@akaringo252588)です!

アメリカで、オオカミを導入して鹿の個体数を管理したという事例をご存知ですか?

それが行われたのは、ロッキー山脈の近くに位置するイエローストーン国立公園

一見、無謀に見えるこの取り組みについて、紹介していきたいと思います。

オオカミ絶滅→導入の経緯

実はイエローストーン国立公園では、もともとオオカミは絶滅していました。

1926年に、畜産業における害獣として駆除され続けた結果、いなくなってしまったのです。

ですがオオカミが絶滅すると、ある問題が起こります。

オオカミが捕食していたエルクが激増するのです。

エルクは世界一大きい鹿と言われ、イエローストーン国立公園にも生息しています。

増え続けていたエルクを管理するため、当時のイエローストーン国立公園ではエルク管理プログラムというものが行われました。

これは国立公園の職員がエルクを管理するというものです。

あかりんご

鹿が増えすぎたから狩猟で管理するという流れは、日本と似ているよね!

ですが1973年、転機が訪れます。

「種の保存法」という法律が制定されたのです。

これは絶滅の恐れのある種や、それが依存する生態系の保全を目的としたもの。

この影響を受け、人間の手で行われていたエルクの捕獲は中止に追い込まれます。

個体数管理を、自然調整に任せることとなったのです。

しかしそのままでは鹿の数が増え続けてしまうので、ここである方針が打ち出されました。

これが、オオカミの再導入です。

オオカミ再導入で再生した生態系

そしてオオカミの再導入には慎重な決断が必要です。

  • 本当にエルクの駆除効果はあるのか…
  • 人間に被害は無いのか…
  • オオカミが増え過ぎたらどうする…

ただ激しい議論がされている間にも、エルクはどんどん増えていきました。

これにより、エルクによる食害は深刻になっていきました。

そして議論を始めてから21年、ついにオオカミは導入されることに決まりました。

環境影響評価を行った後、1995年に14頭、1996年に17頭のオオカミがイエローストーン公園に放たれたのです。

あかりんご

すごい決断…!気になる結果は…!?

そこからオオカミは少しずつ増え、それによってヘラジカの数も減少していきました。

この再導入は期待以上の成果をあげ、今では本来の生態系が見られるようになったと言われています。

一度は絶滅してしまったオオカミが狩りをする姿をひと目見たいと観光客も増え、思いがけないプラス面も生まれているそうです。

これらの結果から、イエローストーン国立公園はオオカミ導入に成功した事例として語られるようになりました。

大成功の裏側には家畜への影響が

オオカミ導入によって生態系が復活した反面、家畜や他の動物への影響が見られました。

一番深刻だったのは、家畜への被害

オオカミの数が増えたことでオオカミが公園外へ広がり、牧場の牛や羊を襲う事件も起こりました。

畜産家にとっては家畜が1頭襲われてしまうだけで、大きな損失です。

こういった問題を解決するため、2つの対策がとられました。

  1. オオカミの捕獲
  2. 基金の設置

①は、オオカミの数を減らして公園外へ広がることを防ぐ目的で行われました。

②は、自然保護団体によって準備された基金で畜産被害の補助を行いました。

このように、オオカミを導入した後も、被害の補償オオカミの個体数管理は必要だということが分かります。

日本にはオオカミを導入できるの?

日本ではオオカミ導入の事例はありません

ですが現在、鹿の生息域が拡大し食害が深刻な地域も出てきています。

よって野生動物の個体数を調整するために、オオカミ導入の議論は行われています。

特に、知床半島が世界自然遺産に登録されることをきっかけに、知床で自然調整に任せた個体数管理が行われるべきだとの主張も起こりました。

知床にオオカミやカワウソがいないことは、この自然が本来あるべき冠を失ったままのものであることを示している。知床の自然が真に世界自然遺産に相応しいものになるためにも、これらターミナルアニマルの復元は不可欠なのではないかと思われる。

知床博物館研究報告「肉食獣再導入問題をめぐって

こういった意見に対しては、このような反論があります。

まず、オオカミが生息できる面積や資源はあるのか、ということです。

事例としてお話ししたアメリカのイエローストーン国立公園は約9000 km²

あかりんご

ちょうど鹿児島県くらいの大きさだね!

対して知床は1200 km²ほど。

ここにオオカミを収容して鹿を管理するには、狭すぎるというのです。

知床半島だけでは1パックのオオカミでさえ収容するのは困難である。拡大知床地域とすれば、潜在エサとなるエゾシカも豊富であり、15頭のパックを最大3パックほど収容できそうである。ただし、この場合、予測不可能な事態がおきて導入個体の管理強化の必要が生じた場合、地域が広いため対応がより困難となる。

知床博物館研究報告「知床に再導入したオオカミを管理できるか

オオカミ導入問題で他にも議論されているのは、イエローストーン国立公園でも行われていた、オオカミの管理です。

オオカミの増え過ぎ、減り過ぎを管理するには、定期的な調査と調整が必要です。

また、オオカミを導入する地域に住む人にも受け入れてもらう必要があります。

オオカミが人を襲うことは滅多にないと言われています。

あかりんご

でも、絶対に襲わないとも言い切れないのが難しいところだね…。

実際にイエローストーン国立公園でも人に慣れたオオカミは駆除されているようです。

住民だけでなく、家畜を飼育している農家さんにとっても、夜間は放牧しないなどの制限が出てくるでしょう。

また万が一、家畜がオオカミに襲われた場合も、補償制度を用意しておく必要はあると思います。

今回お話しした内容は議論の一部であり、現在も絶えず意見の交換がされているところです。

果たして、オオカミ導入が決まる時は来るのでしょうか…!

この記事のまとめ
  • イエローストーン国立公園ではオオカミ導入で鹿の個体数調整に成功。
  • オオカミの管理や家畜被害の補償制度が整っていた。
  • 日本での導入は行われていない。
ABOUT ME
あかりんご
鹿肉専門のキッチンカーSHIKASHIKA店長。神戸大学で畜産を学び牛飼いを志すも「日本で持続可能な肉とは?」という問いをきっかけに、鹿肉と出会う。鹿肉を日本の肉文化に、をビジョンに掲げ、美味しい鹿肉料理を日々提供していたが、より美味しい鹿肉を求めて現在は北海道で鹿を捌いている。