こんにちは!
農家さんから農業被害について話を聞いたことがきっかけで、大学に狩猟サークルを立ち上げてしまった、あかりんご(@akaringo252588)です!
皆さん、獣害という言葉を聞いたことはありますか?
獣害とはイノシシや鹿が農作物などを食べてしまうことを言います。
では現在、どれくらいの獣害被害が起きているのでしょう?
また獣害は近年なぜ増えてきたのでしょう?
今回はそんな考察を交えて獣害についてお話ししていきます!
- 食害:害虫や動物が植物を食い荒らすこと。
- 獣害:食害の中でも、イノシシや鹿などの動物による被害。
158億円の農業被害が起きている
鹿やイノシシといった野生動物によってどれくらいの農業被害が出ているのでしょうか?
下の図は、農水省が発表しているグラフです。
年度別の野生鳥獣による農作物被害額を表しています。
農作物被害額は、平成21年度以降は200億円を上回っていました。
その後全国で野生動物の捕獲が強化されたことにより、平成30年度には158億円にまで減少しています。
次に、平成30年度の農作物被害の内訳を見てみましょう。
鹿が最も多い54億円。
次にイノシシが47億円、猿が8億円と続きます。
鹿とイノシシだけでも100億円近い被害額が算出されているのが今の現状です。
獣害は今に始まったことではない
鹿やイノシシの獣害が指摘されるようになったのは、1980年代です。
それ以前にも食害はありましたが、農家さんの我慢の範囲内で収まっていたのです。
それでは昔は野生動物と人間の境界線はハッキリ敷かれており、獣害などなかったのでしょうか?
実はそうではなかったようです。
江戸時代には、武士より農民の方が多くの鉄砲を持っていました。
その理由は、何と獣害対策。
農民たちは自ら田畑を守るため、代官や藩に鉄砲の使用を願い出て駆除にあたっていたのです。
他にも田畑の6割を荒らされた、年貢の支払いができなくなるほど被害を受けたという記録が残ってます。
このように、江戸時代でも獣害は農家にとって深刻な悩みでした。
人々は昔から鹿やイノシシと対峙しており、その戦いは終わることなく今も続いているのです。
鹿・イノシシの農業被害には特徴がある
それでは、獣害と言いますが実際にどのような農作物が食べられているのでしょうか?
実は、鹿・イノシシそれぞれについて、農業被害の特徴があるのです。
鹿が食べる植物は幅が広い
鹿の被害を受ける作物は、お米を中心に大豆、黒大豆、小豆などの豆類や白菜などの菜葉、大根などの根菜と多岐にわたるのが特徴です。
鹿は食べることのできる植物が多いのです。
鹿は草の葉や茎、実、樹木の葉などを採食し、食べられる植物の種類は1000以上と言われています。
その証拠にニホンジカは日本だけではなくロシア沿海州からベトナムまで東アジアに広く分布しています。
それだけ食性が広いんですね。
このように植物であればほとんど何でも食べることができる反面、農業への影響は大きくなるのです。
雑食のイノシシは米やイモが好き
イノシシに関してはお米を中心ににサツマイモ、バレイショなどの芋類やタケノコ、豆類などが食害にあっています。
イノシシは草食動物の鹿とは異なり、雑食です。
雑食とは肉類や野菜など何でも食べることができる性質で、人間も雑食にあたります。
雑食のイノシシは栄養価が高い部位しか食べないため、芋を掘り起こして食べられたりすることが比較的多いとされています。
米の被害は6月が鹿、9月がイノシシ
鹿とイノシシが食害を及ぼす時期についても違いがあります。
例えば、鹿とイノシシの両方で食害の件数が多かった水稲について見てみましょう。
お米への被害は鹿は6月にピークを迎えるのに対し、イノシシは9月にピークがあります。
これは鹿が田植え後の若い稲を食べることが多いのに対して、イノシシは穂をつけた稲を食べることが多いからです。
またイノシシは足が短く、お腹が地面と近い位置にあるため、イノシシが田んぼに入ると稲がなぎ倒されてしまいます。

こうなってしまうと機械が入れず、収穫が困難になります。
よってイノシシの方が稲に大きな被害を及ぼすと言われています。
獣害が起こる3つの理由
それではなぜ近年になって農業被害額が増えたのでしょうか?
私が考える原因は、大きく分けて3つあります。
人の気配がなくなった
一つ目に、人の気配が無くなったことが挙げられます。
かつて森には、林業を営む人が多く出入りしていました。
また、森で木材を炭にする炭焼きをする人も多くいました。
他にも近くの農村から薪を拾いに来る人、堆肥作りの材料となる落ち葉を集めに来る人も少ななかったのです。
そうした人々によって野生動物はたびたび追い払われ、動物は人里に近付きにくい状況にありました。
昔は山も大事な資源として使っていたんだね!
しかし近年、安い輸入材が大量に日本に流入し、国産木材の価値が下がっています。
また燃料革命や化学肥料の普及により、燃やすための木片や落ち葉を拾いに来る人が格段に減りました。
これにより森林と里との境界線に人の気配がなくなったのです。
野生動物は、この境界線を越えて里に降りてくるようになったと考えられます。
耕作放棄地の増加
2つ目に、耕作放棄地の増加です。
広く平らな農地は、機械で効率的に農業を行うことができます。
しかし山間地では農地が狭く高低差が大きい土地が多いのです。
よって非効率的とみなされ、耕作が放棄されている畑が目立ちます。
その畑では様々な植物が生えてきて、藪となります。
この藪が野生動物の隠れ場所となり、新たな食害を引き起こす原因となるのです。
農作物の放置
3つ目に、野生動物の餌となる農作物が畑に放置されていることが挙げられます。
食糧が不足していた時代は、田畑で作ったものは全て収穫し利用していました。
しかし今は質によって作物を選別する時代です。
そこで間引きされたものや虫食いがあるものは畑に取り残されます。
またキャベツや白菜の外についている葉は取り除いて出荷するのですが、その葉っぱなども放置されている場合があります。
豊作で出荷量の調整を行う場合はトラクターで踏み付ける手段がとられますが、これも動物のご馳走となるのです。
鹿などが食べる前に堆肥化されれば問題ないのですが、田畑が野生動物にとって絶好の餌場になっていることも否めません。
餌場として覚えると動物は何度もやって来るから、まずは餌場を作らないことも大切だね!
このように、獣害が近年問題になってきた背景には動物ではなく人間の方に原因があるのではないかと私は考えます。
さいごに
今回は獣害についてお話ししました。
このサイトでは主にジビエを扱っていますが、実がこうした獣害もジビエに関わっています。
なぜならジビエ、狩猟、農業の全ては繋がっているからです。
農業を守るための狩猟があり、狩猟の結果としてジビエがあります。
そんな業種を超えた繋がりを感じられるのも、ジビエです。
この繋がりを面白いなと思っていただければ嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
- 農作物被害額は平成30年度で158億円。
- 鹿は食性が広く植物であればほとんど何でも食べられる。
- イノシシは雑食性で栄養価の高く消化の良いものを優先的に食べる。
- 農作物被害の増加には人間側にも問題がある。