こんにちは!
ジビエーる編集部です!
今回は、ジビエ産業の時事ネタということで、先日大変面白いニュースが舞い込んできましたので、その件について少し考察も含めてお知らせしたいと思います。
突然ですが皆さん、ALSOKという会社をご存知ですか?
そうです!家を守るCMで有名なあのALSOKです。
もしもの時に、家を守ってくれるALSOKですが、
実は獣害から人の安心安全を守るという観点で2013年あたりから、鳥獣害対策にも取り組んでいます。
今回はそんなALSOKの新規事業について紹介したいと思います。
畑も守る!ALSOKの事業内容とは?
それでは早速、ALSOKの事業内容について見ていきましょう。
その前に、一つのニュースを紹介したいと思います。
ALSOK千葉、茂原にイノシシ加工場 冷凍肉で出荷
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62383570W0A800C2L71000/
私がALSOKのジビエ・獣害対策事業を知ったきっかけは、こちらのニュースでした。
このニュースをまとめると、以下のようになります。
- ALSOKグループのALSOK千葉が千葉県の茂原市にジビエ食肉加工施設を開いた。
- 広さは200平方メートルで建設資金は2億円。
- 年間4000頭の捕獲を目指す。
さらに私が注目した点は、罠にかかったイノシシをALSOKが回収し、運んで処理をするという点です。
罠の設置、見回り、止め刺し、搬入…ジビエ利用をするには猟師さんの負担が大きいと思われていたこの負担をALSOKは軽減しています。
ALSOKとしては、報奨金の手続きや処理の手間を減らし、捕獲を後押しするという狙いがあるようです。
また、ジビエ事業に欠かせない、品質を安定化させる狙いもあると思われます!
さらに、この広さは200平方メートル、建設資金は2億円というのはどのような規模なのでしょうか?
農林水産省が発表している食肉加工施設の取り組み事例を参考に比べてみましょう。
取り組み事例で取り上げられているものは、基本的には面積が100平方メートル、多くても150平方メートルでした。
こうして見ると、ALSOKの食肉加工施設は大きな規模だと言うことができるでしょう。
おそらく、日本最大規模の野生鳥獣食肉加工施設であると思われます!
ALSOKの知られざる獣害対策事業とは?
改めてになりますが、
実はホームセキュリティで有名なALSOKは2013年から本格的に鳥獣害対策へ取り組みはじめ、
そして、現在では認定鳥獣捕獲等事業者として全国各地で鳥獣対策の事業を展開しています。
その事業内容について、少し整理して紹介してみたいと思います。
捕獲〜処理施設への移送を行う、捕獲業務
これは有害鳥獣を捕獲する作業の中で、捕獲〜止め刺し、処理施設への移送をALSOKが行うというものです。
まずIoTを使用した罠を使って、野生動物を捕獲します。
捕獲された時点でALSOKへメールで通知が送られます。
そして現場へ急行したALSOKはその場で止め刺しを行い、埋設場所または処理施設へ移送するのです。
このサービスは地域限定で行われていますが、より多くの害獣を捕獲したいと考えている市町村にとっては重要なサービスと言えるでしょう。
IoTから小動物用まで、罠の販売
また、ALSOKは罠の販売も行っています。
販売されている罠の幅は広く、IoT活用のトラップも販売されています。
- 鳥獣わな監視装置Ⅱ
- センサーカメラ
前者は罠が作動したらメールが届くようなシステムのことです。
親機と子機に分かれており、罠の作動を検知した子機の信号を受け取った親機が、携帯へメールを送信するシステムになっています。
また後者のセンサーカメラは罠が見える位置に設定し、遠隔で罠に動物がかかっているかをチェックすることができます。
次に紹介するのはALSOKが販売している一般的な罠です。
- イノシシ・鹿用の箱罠
- サル用の囲い罠
- 鹿用の囲い罠
- カラス用の囲い罠
- 小動物用の箱罠
イノシシ、鹿用の箱罠、囲い罠だけでなく小動物やカラス用の罠も販売しています。
その商品のラインナップの広さに驚きですね。
環境省の認定鳥獣捕獲等事業者とは?
環境省が定める認定の一つに、認定鳥獣捕獲等事業者というものがあります。
これは鳥獣の捕獲に関する安全管理や、適正かつ効率的に鳥獣の捕獲をするために必要な技能や知識が一定の基準に適合しているという認定です。
この認定では鳥獣の管理を強化する上で、公的な捕獲事業の担い手として科学的な計画に沿って鳥獣の管理を実施していくことが求められています。
鹿やイノシシが急増して生息域が拡大している問題に対して、より鳥獣の管理を強化する必要性が高まってきたという背景から作られたものです。
そして、ALSOKは認定鳥獣捕獲等事業者の認定を持っているのです。
これによってALSOKは万全の安全管理と捕獲技術が保証されており、任せる側も安心という事ですね。
ALSOKがジビエに参入するということの可能性
それでは、本題に入ります。
私がなぜALSOKのジビエ参入を見てジビエに可能性を感じたのかを説明して行こうと思います。
結論から言えば、大企業の参入によってジビエ業界が抱えていた人・モノ・金の問題が解決すると思うこと、
加えて、ジビエ業界の抱える様々な付属的な問題の健全化にはこうした世間的に認知のある企業の参入はとても大きなことだと思ったからです。
まず加工施設を立てる事そのものに大量のお金が必要です。
そしてそれを動かしていくための冷蔵・冷凍設備に、大きなランニングコストがかかってきます。
もし人を雇うのであれば、それだけのお金や人材が必要です。
現在ほとんどの加工施設は、中小規模で家族経営などが多いようです。
そこで解体や食肉加工だけでなく販売や会計計算を行う必要があります。
さらに人を雇う場合は人材育成や給与計算などの業務も必要です。
このように、ジビエの食肉加工施設が抱える問題は、個人で解決するには負担が大きいように思うのです。
そこで大企業の参入すればどうでしょう?
人・モノ・金に関するコネクションや技術を兼ね備えた企業であれば、ジビエ流通の基盤をグイッと底上げすることができます。
なぜなら資本力・人材育成のノウハウ・求人…全てにおいて大きな企業は有利だからです。
そしてその先陣を、ALSOKが切ったと言えます。
これはジビエ業界にとっては大きな節目になると私が思っています。
ジビエに可能性を見出した大企業が、大規模な食肉加工施設を立ち上げた。
それはジビエが秘める力をさらに引き出し、流通させていくことに繋がるのではないでしょうか?
まとめに
今回のような、大企業の参入はジビエ業界にとって大変大きな一歩なのではないかと私は思っています。
もしALSOKがジビエ事業で成功すれば、それを見た他の企業もどんどん参入するはずです。
それにより、ジビエ業界の抱える様々な問題が健全化することになり、産業としての成熟度が上がることになるでしょう。
一方、今は地域レベルで中小規模の加工施設が多いのが現状。
そこで大規模な加工施設ができることによって、安定供給など中小規模の加工施設では負担になっていたものを分業できると私は思っています。
そして大規模施設は安定的に、中小規模の施設はブランディングを重視して…といったジビエの中での棲み分けが起こってくるのではないでしょうか。
そうなれば、ジビエはもっと面白くなる。
私はそう信じています。