こんにちは!
ジビエの歴史を調べていると、日本人と鹿ってやたら昔からお付き合いがあるみたいですが、
獲って食べることもしつつ、いくつかの場所(主に神社)では保護されていることに???となっていたので調べてみました、
ライターのあかりんごです。
今回は、最も有名であろう、奈良公園を主題材にしてお話していこうと思います。
鹿がいる神社って?
そもそも、鹿が保護され、観光客などが鹿せんべいを与えたりする神社って日本にどの程度あるのでしょうか?
鹿と触れ合える日本の神社
境内を歩く鹿と近くで触れ合える神社は、
- 奈良県の春日神社(奈良公園)
- 宮城県の黄金山神社
- 広島県の厳島神社
の3つです。
また、柵やフェンス越しに鹿を見ることができる神社は茨城県の鹿島神宮や神奈川県の相州春日神社などもあるようです。
奈良公園の鹿
奈良公園の鹿は特に有名ですよね?
鹿と言えば奈良、みたいな強いイメージがあるほど、有名かと思います。
奈良の都は今から約1300年前の710年に遷都し、それに付随して興福寺や東大寺、春日大社が建造されました。
美しい歴史的文化遺産と緑豊かな自然、さらに人馴れした鹿が風物詩となった奈良公園は、他に例を見ない歴史公園だと言われています。
なぜ神社に鹿がいるのか?
そもそも、なぜ奈良公園には鹿がたくさんいるのでしょう?
そして、その鹿と人間はどのような関係があるのでしょうか?
鹿は神社のペット??
あの鹿たちは、飼われていいるように外部からは見えますが、
実は、飼育されているわけではありません。(つまり野生)
奈良公園に姿をみせる鹿は夜中も公園にいる鹿と、
夜には若草山へ戻る鹿の2種類が存在しますが、そのどちらも主に食べているのは草です。
奈良公園では鹿せんべいが有名ですが、鹿せんべいはあくまでおやつなんですね。
ちなみに、鹿せんべいが大好きな鹿ですが、食べすぎて喉が乾き、基本腹をくだしているそうです。
それが、このコロナの状況となり、観光客が減ったことで、鹿せんべいを食べる機会が減り、快便だそう…笑
ここ数年は下痢気味でべちゃっとしたシカのふんが多かったが、3月ごろから、俳優の吉永小百合さんが『奈良の春日野』で『黒豆』と歌ったようにコロコロと丸く、健康的な形に戻ってきた。においも弱くなりました
朝日新聞デジタル:https://www.asahi.com/articles/ASN666R03N5PPOMB006.html
また公園内の木の葉も食べることがあるので、樹林の190〜195cmくらいの高さまでは遠くまで見通しがよくなっています。
これを、鹿が作り出したラインだとしてディアラインと呼ばれているそうです。
このように、奈良公園の鹿は飼育されているのではなく、あくまでエリアを決めて野生の鹿を大切に保護しているというのが事実なのです。
神の遣いが天の原から降りてくる時に使った乗り物
では、そもそも、なぜ保護をしているのでしょうか?
それは、春日大社の社伝「古社記」に遡ります。
春日神社の祭神はタケミカヅチノミコトといいます。
このタケミカヅチノミコトは鹿島神社から神鹿に乗ってやってきたとされています。
よって鹿は神の使いとして保護されてきました。
こういった記録が768年に残っていたため、奈良公園付近での鹿の保護は1000年を超える歴史があると言えます。
厳島神社の鹿のみは神の使いとはされていない!?
広島の厳島神社についても、鹿は神社や露天と並び観光客に人気です。
しかし奈良の鹿のように宗教的な関係があるかというと、そうではないようです。
厳島神社周辺に、島内に生息していた野生の鹿がやってくるようになったのは、観光振興のために住民が餌を与えたからだというのが有力な説だそうです。
そうやって神社周辺に集まるようになった鹿ですが、宗教的な背景がなかったこともあり人との共生はうまくいきませんでした。
しかし一度住みついてしまった鹿はなかなか森へ帰らず、鹿せんべいの販売を中止するといった措置が取られました。
ですがこれも上手くいかず、花壇の植え込みなどの草を鹿が食い荒らすという問題も起こり始めました。
以前よりは、神社付近に訪れる鹿は少なくなってきているようですが、未だフェリー乗り場に侵入してしまう鹿もいるそうです。
現在、鹿に対する餌やりは全面禁止となっているので、訪れた時には気をつけましょうね!(可愛いけど襲われることもあるので、気をつけて!)
鹿の角切り!?神社で行われている伝統行事
さて、鹿を長年保護してきた、春日神社では古くから行われている伝統行事があります。
鹿の角切り
オス鹿は春から角を伸ばし始め、秋には立派な角を持つようになります。
角は鹿の年齢に比例して分岐も多くなり、大きな角になっていきます。
そして秋の発情期にはメスを巡ってその角で戦うのです。
しかし、発情期に興奮したオス鹿がこの角で町民や観光客人を突き、危害を加えることもあります。
角の先端は鋭くなっているため、江戸時代には怪我人が続出して問題となったのです。
そこで江戸時代に奈良奉公所の溝口豊前守が考え出したのが鹿の角切りでした。
もちろん鹿を傷つけることにならないかという議論もありました。
ですが鹿の角というのは発情期が終わった冬には抜け落ち、春にまた新しい角が生えてきます。
鹿の角は冬に落ちてしまうのだから、自然に落ちるよりも少し早く切り落とすのは構わないだろうということになったのです。
初めは怪我の防止のために始められたこの行事は観光客に人気で、今では秋の行事の一環としてとても人気のあるイベントになっています。
鹿寄せ
鹿寄せとはホルンの音色で鹿を呼び寄せる伝統行事です。
これは1892年に鹿園竣工奉告祭でラッパを使って鹿を呼んだのが始まりでした。
春日大社山道南側の飛火野と呼ばれる場所で数回行われています。
奈良の鹿愛護会が行っている鹿寄せでは、まず観光客に対して歴史や季節による鹿の生態が伝えられます。
次にナチュラルホルンを吹くと、森の方から鹿がたくさん集まってきます。
集まった鹿にはご褒美としてどんぐりを与えます。
どんぐりを食べた鹿たちはその辺をうろうろしたり、森へ帰ったりと思い思いに時間を過ごします。
鹿せんべいの販売や鹿寄せはあくまで観光客が楽しむためのイベントであり、鹿に餌付けをしているという訳ではないそうです。
鹿寄せは期間限定で午前中に行われます。
詳しくは奈良の鹿愛護会のイベントページをチェックしてみてください。
小鹿公開
小鹿公開イベントは、春日大社にある鹿苑という鹿の保護施設で行われます。
鹿苑では毎年4月から妊娠している母鹿を保護し、赤ちゃんがある程度成長するまで保護します。
鹿の赤ちゃんが誕生するのは5月中旬〜7月頃なので、
6月に期間限定で鹿の赤ちゃんが公開されます。
このイベントでは、小さくて鹿の子模様が浮き出た小鹿を柵の外から眺めることができます。
また鹿苑では奈良の鹿に関する生態や歴史が学べる展示ゾーンも充実しており、その他ドングリ餌やり体験(無料)ができるブースもあります。
奈良公園に遊びに行った時は、親子で楽しめる鹿苑にも行ってみて下さい。
鹿と触れ合う時は、ルールを守って楽しもう!
鹿は草やドングリ、木の葉を食べて生活しています。
パンやお弁当の残り、紙などを鹿に与えると、鹿は中毒を起こしたり病気を起こす原因となったりします。
よって、もし鹿に餌をあげたい時は奈良公園で鹿せんべいを購入しましょう。
また、最近では鹿が観光客の残したゴミを間違って食べてしまう問題が深刻化しています。
パンフレットやポリエチレン袋をむやみに捨てると鹿は餌だと勘違いしてしまうのです。
ゴミは必ず持ち帰ることを念頭において鹿との触れ合いを楽しんでいただければと思います。
そして、厳島神社のように餌付けが禁止されている地域もあります。
餌を求めて近付いてくる鹿は可愛いものですが、鹿のためにもルールはしっかり守りましょう。
終わりに
奈良公園に鹿がいるのは、神様の使いとして大切に保護されてきたからでした。
信仰の証としての鹿と人間が上手く共存するために鹿の角切りなどの行事が行われていることなどもわかりました!
普段、狩猟や有害鳥獣という切り口で鹿について考えている私も、こうしてある部分では鹿を保護し、愛でること、それもまた大事なことだと思いました。
ただ、一概に”鹿”と一括りにして考えることができない難しさもあります。
ジビエとしての”鹿”
信仰の証としての”鹿”
有害鳥獣の”鹿”
今回の記事を読んで、皆さんにも鹿について考えてもらえるきっかけを持ってもらえたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。