1年の中で11月15日を楽しみにし、仕事の有休は極力猟期にあてる猟師の父が入院したという話をきいたのは、2015年の冬、父が60歳になる年でした。
父は、運が悪いことに、マダニにかまれ、致死率20%といわれるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)を発症したのです。
元気が取り柄の父の、急な入院。
長くて覚えられない病名、本人にきいても「退屈で死にそう」という、割と元気そうな返事に、一体どんな病気なのか見当もつきませんでした。
しかし、医療機関に努める弟から「症例がまだ少なく、致死率もある病気。他の病気にかかったら大変」ときき心配も募りました。
今回は、そんな猟師の父がかかった、SFTSに関して父の実体験をもとにまとめます。
SFTSとは
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは、ウイルスを保有しているマダニに咬まれることで人に感染するダニ媒介感染症で、2011年に中国の研究者によって発表されました。
しかし、SFTSが認知されてから2013年1月に国内で見つかった感染者はに海外渡航歴はなく、ウイルスも中国で見つかっている遺伝子と異なっている事が解りました。
つまり、海外から入ってきた病気ではなく、日本に以前から存在しているウイルスだったということです。
このウィルスを保有していることがあるとされるダニは、フタトゲチマダニとタカサゴキララマダニということがわかっています。
ただし、この2種類のダニが必ずウイルスを保有しているわけではないので、マダニに噛まれたからといってSFTSになるわけではありません。
日本ではまだまだデータの少ない、珍しい感染症とされています。
国内での発症例は2013年から2019年10月までに491件、うち死亡者は70名です。
中国では6~30%の致死率ですが、国内データでは約20%となっています。
男女比はほぼ1:1で、感染者の年齢中央値は75歳、高齢者になる程致死率も上がります。
毎年60~90名前後の症例が報告されており、確認され次第、病院は保健所や県に報告することになっているそうです。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を発祥した原因
発症する6日前、足を2箇所ほどマダニに噛まれていいましたが、マダニに噛まれたことはこれまでに幾度とあり、気にとめませんでした。
父は多くの発症例とおなじく、マダニからの感染で発症しました。
その他の経路として、SFTSはまれに、血液等の患者体液との接触により人から人へ感染することもあります。
また、飼い猫がSFTSに感染しているケースもあるので、ペットを飼っている人は、ダニの対処を徹底することや、症状によって注意が必要です。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は対策できるのか
猟師ではなくとも、山に行けばマダニに噛まれる可能性はあります。
だから、山にいく時はできるだけ肌を出さないよう対策することが大切です。
また、発症例を見てみると、関西、中国、四国、沖縄、九州が主で、中部地方を以北では症例が東京の1件のみとなっており、推定感染地域では東京も外れます。
つまり、現在SFTSを発症しているのは中部地方から南の比較的あたたかい地域だけです。
マダニ経由で感染するので、完璧に防ぐことは難しいですが、中部地方から南に住んでいる人が山に入る際は肌を出さないようにすることが、意識的にできる対策となります。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の症状
父は、マダニに噛まれて6日ほどたった頃、微熱と倦怠感がでたといいます。
冬場で「微熱熱があるのに、喉もいたくないし、咳もでない」、そこに違和感をおぼえ、病院に行った父は、血液検査を行いました。
結果、SFTSだと発覚したのです。
SFTSの症状は、
- 発熱
- 消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)
まれに、
- 頭痛
- 筋肉痛
- 神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)
- リンパ節腫脹
- 呼吸不全症状
- 出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)
も出るようです。
実際ウイルスによる発症で体にでる変化は、「あれ?おかしいな」という程度だといいます。
ただ、SFTSが怖い点は、血小板が減り続け、免疫不全に陥る点です。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の入院中の治療
SFTSには、治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはありません。
父は数値が落ち着くまで「安静に管理される」入院をしていました。
SFTSにより、血小板の数値が0にちかくなり、その間、他の病気にかかると致命的です。
風邪やインフルエンザなど、がうつるのはもってのほか。
なので、隔離された部屋で、うろうろせず、できるだけ人に会わず、数値がおちつくまでおとなしくしている必要があります。
ちなみに、医師に、「一度なったら免疫がつきますか?」ときいたところ、「データがないのでわからない」と言われたそうです。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)発症から退院までの期間
父がマダニに噛まれ、6日後に発熱と倦怠感で発症に気づき、即入院、父の場合は5日程の入院で退院しました。
つまり、ダニに噛まれてからは2週間ほどです。
退院できる目安は血小板の数値がおちついてきたら。
数値を確認して、医師の許可が出て、退院が可能になります。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)発症後の体調は
猟が大好きな父は、大事な猟期にまさかの入院となり、大変ショックをうけていました。
また、暫くの間、治療らしい治療もなしに隔離されるのでストレスもたまったようです。
体調はその後問題なく元気で、定年退職後は、猟期だけじゃなく、駆除で罠もはじめ、狩猟に勤しんでいます。
父は運よく、全快しましたが、今回紹介したSFTSは、国内致死率20%で、予防策も、明確な治療法やワクチンもありません。
ダニに噛まれて、「おかしいな」とおもったら、ぜひ早めの受診を心がけてください。
リスクがあっても、山に入って狩をしたい。
そんなにも大きな魅力がジビエにはあるのです。